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Monthly Column

ー奔放で つややかで したたかな 21世紀のミューズたちー

『21世紀の女の子』 上映:4月6日(土)〜 4月19日(金)

2019年 日本 1時間57分監督:山戸結希/井樫彩/枝優花/加藤綾佳/坂本ユカリ/他出演:橋本愛/朝倉あき/石橋静河/伊藤沙莉/唐田えりか/他

おニャン子クラブがお茶の間を沸かせたのは80年代半ばのことだった。夕方のバラエティ番組にアシスタントとして登場する女の子たちには会員番号があって、会員がアイドルになる構図を小学生ながら不思議な面持ちで見ていたものだ。学校から帰ってテレビをつけると可愛いお姉さんたちが入れ替わり立ち替わり登場してくる。歌が大ヒットし、学校では女の子も男の子も何番の誰それファンだという話題で持ちきりだった。名指しで応援するものの、個別のアイドルとは違う、集団性にしかなし得ない力がそこにはあった。乙女塾に桜っ子クラブに、東京パフォーマンスドール…。80年代、90年代に青春期を駆け抜けた私は、熱狂的にこそならないが、それなりに女性アイドルグループの流れとともに時代を過ごしてきた。いつの間にか時が過ぎ、次から次へと新しい芽が出てくることに追いつけなくなり、AKBをはじめとするたくさんのアルファベットの並びは一向に覚えられないおばさんになった。
女の子たちの生のきらめきが、時代とメディアを動かすことにかけては不動である。それは分かっていたとしても、歌と踊りがセットだった表現の場が映画に滑り込んできた『21世紀の女の子』には今更ながらの新鮮さを感じた。企画・プロデュースは新しい時代の女性監督として常に話題を作り上げる山戸結希監督。そういえば、彼女が学生時代に手がけた『あの娘が海辺で踊ってる』 (2012)で出てくる主人公は田舎町でAKBに憧れる少女だったけれど、まとまった力から突き出てくる個の力なのか、個から生まれる集団性なのか、どちらにせよ双方向に伸び縮みする可能性の強さを新世代監督はいとも簡単に味方につけてしまえたようだ。
公募で集められた15人の女性監督、そして2000人に及ぶオーディションで出演が決まったキャストたちのめくるめく世界が展開するオムニバス。8分以内という制約がまた小気味好いテンポと潔い諦め感を生み出している。監督たちに課せられたテーマが「自分自身のセクシャリティあるいはジェンダーが揺らいだ瞬間が映っていること」というのがまたいい。彼女たちは生物としての女性である自分たちを、人がどう見るかは二の次、内側からほとばしるエネルギーを映画に転換しようと試みる。
時代は20世紀の女の子から21世紀の女の子へと動いている。その実証が映画として軽快に飛び出していくのもまた新時代の幕開けなのかもしれない。

(志尾睦子)

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