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Monthly Column

ー2018年、夏。ー

『悲しみに、こんにちは』 上映:9月1日(土)〜 9月14日(金)

2017年 スペイン 1時間40分監督:カルラ・シモン出演:ライラ・アルティガス/パウラ・ロブレス/ブルーナ・クッシ

7月。熊谷市が41.1度という国内観測史上最高気温を記録した。
寒さが苦手で、暑さに耐えるのは自信がある私だが、今年の暑さは尋常ではなかった。
そんな暑い夏もあっという間に終わる。
夏休みがあった時代から遠くはなれたところに居るが、未だに夏には特別な時間が流れているような気がしてならない。普段できないことができる、してもよし。何か許される気がしてしまうのだ。
そんな夏を描いた映画には印象深いものが多い。とりわけ、エリック・ロメール監督の夏映画が好きだ。主人公たちはたいてい避暑地でヴァカンスを過ごす。しかし、そこで起こることは特別ではない。木々をゆらす風、射し込む光、鳥のさえずり・・・何かが自然に起こることをそのまま受け入れて映し出しているだけ。だからこそ主人公や周りの人たちのちょっとした心の動きも手に取るように伝わってくるし、夏というマジックが相まって時間の流れ自体が美しく、尊く、輝いて見える。そんなロメールを思わせるスペイン映画である。
6歳の少女・フリダが、母親を亡くし、叔父一家のもとで暮らし始める初めての夏を描いている。
何気ない日常を切り取ったシーンは、首都バルセロナから叔父の住む陽光まぶしい地方の避暑地で夏休みを過ごす少女にも見えてくるが、フリダとその新しい家族に起こる何もかもを見ているうちに、フリダが悲しみではない何かを抱えていることを感じてくる。
その「何か」をフリダは「わからない」でいる。

わからないからこそ、フリダは大人たちの行動よく観察したり、時に反抗したり…。その1つ1つが丁寧に映し出されていくから、フリダの心が手に取るように伝わってくる。
わからなくていいのだ。
大人だってわからないことだらけなのだから。
平成最後の夏。忘れがたい作品と出会えた。

(小林栄子)