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2024年12月2日
12/13(金)より デビュー20周年記念上映「映画作家 七里圭」
七里圭監督デビュー20周年×シネマテークたかさき開館20周年
<特集上映> 映画作家 七里圭
デビュー作『のんきな姉さん』から最新作『ピアニストを待ちながら』まで。主に自主製作で映画を作り、他ジャンルのアーティストとのコラボレーションなど実験性に富んだ作品を世に放つ七里圭監督の作家性に迫ります。
【上映期間】12月13日(金)~12月26日(木) 2週間上映
【通常料金】
【上映作品】
『ピアニストを待ちながら』2024年 日本 1時間1分
監督・脚本:七里圭
出演: 井之脇海/木竜麻生/大友一生/澁谷麻美/斉藤陽一郎
12月13日(金)~12月26日(木) 2週間上映
真夜中の図書館で目を覚ました瞬介。階段の両側には、吹き抜けの天井まで高く伸びた本棚がそびえ、あちこちの段に小さなヒトガタが潜んでいる。扉という扉を開けて外に出てみるが、なぜか館内に戻ってしまう。やがて、旧友の行人、貴織と再会する。いつまでも明けない夜、学生時代の演劇仲間だった3人は、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは、行人が作・演するはずだった「ピアニストを待ちながら」であった。
『のんきな姉さん デジタルリマスター版』2004年 日本 1時間27分
監督・脚本:七里圭
出演: 梶原阿貴/塩田貞治/大森南朋
12月21日(土)・12月24日(火)・12月26日(木) 上映
姉との禁じられた愛の記憶を小説に書き、雪山で自殺しようとする弟と、聖なる夜にオフィスで残業する姉。その二人の現在に、記憶=小説がフラッシュ・バックされてゆく。雪山と都会、現在と過去という二つの空間、二つの時間が錯綜し、いつしか姉弟はふたりきりで、夜空一杯に打ちあがる花火を見ている。そこは夢の世界か、黄泉の国か…。
目覚めれば目覚めるほど夢に近づいていく、不思議な感触の長編劇場公開映画第一作。七里はこのデビュー作を監督するにあたり、敬愛する山本直樹の同名漫画を原作にして、その漫画の霊感源、唐十郎『安寿子の靴』、森鴎外『山椒大夫』までを射程に収めた。
『夢で逢えたら』2004年 日本 20分 ※『のんきな姉さん』と併映
監督:七里圭
出演: 安妙子/大友三郎
12月21日(土)・12月24日(火)・12月26日(木) 上映
バスで眠っているうちに、僕は〝どこか″にたどり着く。よく知っているような、でもぜんぜん知らないような街。長い坂道、釣り堀の向こうの公園、揺れるブランコ。そして僕は、一人の女性に逢った。誰だろう?よく知っているような、知らないような、彼女の部屋……。まるで夢の中に迷い込んでしまったような、寄る辺ない不思議な切なさを湛えた実験的な短編。
『眠り姫 サラウンドリマスター版』2007年 日本 1時間20分
監督・脚本・撮影:七里圭
声の出演:つぐみ/西島秀俊/山本浩司
12月22日(日)・12月25日(水) 上映
いま出てきたトイレの中に、誰かがいるような気がしてならない…。パジャマ姿の青地(つぐみ)が眩しそうにカーテンをめくる。もう陽も高い。中学の非常勤講師をしている彼女は、このごろ学校へ行くのがおっくうで、いくら寝ても寝たりない感じが抜けない。同僚教師の野口(西島秀俊)は、自分の顔のことは棚に上げ、青地の顔がだんだん膨らんできていると笑う。長く付き合い過ぎた彼氏(山本浩司)との会話は上滑りし、好きだという気持ちもすでにおぼろになっている。繰り返し見続けるのは、記憶とも妄想ともつかぬ奇妙な夢。どうも何かが変だ…。
夢は、体が眠っているのに脳は活動している半覚醒状態に現れるが、冒頭、夜が朝へと移りゆくまどろみの時間を映し出す本作は、全編、夢の中の出来事かのように思わせる。ほとんど人の姿が映らない空っぽの風景にさざめく、濃密な人の気配と声。静かに狂気を孕んでいく男女の日常が、美しい朝焼けや薄明の光景とともに、声や物音だけでつづられていく。山本直樹原作の同名漫画は、幻聴を主題にした内田百閒『山高帽子』を下敷きにしている。2007年の初公開から毎年アンコール上映が繰り返されているほど、熱狂的なファンを持つカルト映画。なぜ人々がこの作品に魅かれ続けるのか、それは観た者にしか分からない。
『背 吉増剛造×空間現代』2022年 日本 1時間22分
監督・撮影:七里圭
出演:吉増剛造/空間現代
12月20日(金)・12月23日(月) 上映
80歳を超えてなお旺盛な創作活動を続ける、日本を代表する現代詩人・吉増剛造。彼が、先鋭的なオルタナティブロックバンド・空間現代と、京都の小さなライブハウス「外」で2019年に行った、朗読ライブ《背》の記録。そこで詠まれたのは、窓の外、ガラスの向こうに捧げる詩だった。
吉増はその年の夏、2011年の東日本大震災で津波を引き起こした海に面する宿の小部屋で、窓の向こうの海に浮かぶ霊島・金華山を眺めながら、その地に足を踏み入れることなく、窓ガラスに言葉を紡いだ。石巻で創作された詩を、吉増はマスクや目隠しを用いながら、声の限りに叫び、録音を再生し、ありったけの力で透明なガラスにドローイングする。詩人の声に呼応する空間現代の奏でる音、響き。鬼気迫るライブ・パフォーマンスが浮き彫りにする、ある宇宙。
『DUBHOUSE:物質試行52』2012年 日本 16分 ※『背 吉増剛造×空間現代』と併映
※35mmフィルム上映
監督・撮影:七里圭
12月20日(金)・12月23日(月) 上映
2010年国立近代美術館における建築家鈴木了二のインスタレーション「物質試行51:DUBHOUSE」の記録映画。建築が生み出す闇を捉えるという当初の意図は、翌年3月11日の出来事により決定的な変化を被る。七里は、展示作品を撮影した光の部分と同じ時間の闇を冒頭に置き、その中に、鈴木が描いた被災地のドローイングを沈ませた。映画館は、闇を内在した建築である。その闇から浮かび上がろうとする映画は、映画館に放たれる光であると同時に、祈りであるかも知れない。これはメタ映画であり、歴史的出来事への応答でもある。