市井の人々を興味のおもむくままに記録し、好奇心と行動力に溢れたフランスの映画監督であり、写真家、ビジュアル・アーティストでもあるアニエス・ヴァルダ。享年90歳。ドキュメンタリー作家としての初期の傑作『ダゲール街の人々』、ヌーヴェルヴァーグ誕生前夜に製作された長編劇映画デビュー作『ラ・ポワント・クールト』、自身のキャリアを振り返る集大成『アニエスによるヴァルダ』、そして現代アートの世界でも高い評価を受ける『落穂拾い』の4作品を特集上映。
ラ・ポワント・クールト
La Pointe-Courte Main Language:French 1954年
フランス 1時間20分 監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
編集:アラン・レネ 出演:フィリップ・ノワレ/シルヴィア・モンフォール
ヴァルダ監督が第二次世界大戦中に家族で疎開していたフランス南部の漁村ポワント・クールト。政府から漁を禁じられている村人たちの日々の営みを活写していくとともに、生まれ故郷に戻ってきた男と、彼を追ってパリからやって来た妻、4年続いた結婚生活に危機を迎えている一組の夫婦の非日常を見せていく。
ダゲール街の人々
Daguerréotypes Main Language:French
1975年 フランス 1時間19分 監督:アニエス・ヴァルダ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー/ヌーリス・アヴィヴ
ヴァルダ監督が半世紀以上事務所兼自宅を構えていたパリ14区、モンパルナスのダゲール通り。銀板写真を発明した19世紀の発明家の名を冠した通りには、肉屋、パン屋、香水屋、時計屋など様々な商店が立ち並ぶ。その庶民的な風景をこよなく愛したヴァルダがこの場所でカメラを回すと日常が特別な時間へと変わる。
落穂拾い
Les glaneurs et la glaneuse Main Language:French 2000年
フランス 1時間22分 監督・脚本・撮影・編集:アニエス・ヴァルダ
音楽:ジョアンナ・ブルズドヴィチュ
パリの市場で路上に落ちているものを拾う人たちを見たヴァルダ監督は、ミレーの名画「落穂拾い」を連想する。田舎ではまだ落穂拾いをしているのだろうか?という疑問にかられ、ハンディカメラを手にフランス各地の現代の“落穂拾い”を探しに旅に出る。現代の消費社会を軽やかに批評しつつ監督自身の内面も見つめていく。
アニエスによるヴァルダ
Varda par Agnès Main Language: French,English
2019年 フランス 1時間59分 監督:アニエス・ヴァルダ
製作:ロザリー・ヴァルダ
長編デビュー作から最新作まで、ヴァルダ監督が自作を語り尽くす。その口調はユーモアにあふれ、ひらめきと創造に満ちている。自身の映画作りの基礎から、個々の作品の手法をアーカイブ映像の数々を交えて具体的に解説していく。映画を愛し、人生を愛し、老いという変化を楽しみ、生涯現役を貫いた監督の集大成的作品。