1956年、少年・井藤正治は屋根の鉄板をはがしては小銭を稼ぎその日を生き延びた。過去に引きずられ今を生きない父親を見限ったのは正治の方だった。そうして少年は、裸一貫ひとりで裏社会を駆け上り、気づけばヤクザの組長になっていた。本作は、日本の昭和史であり、日本社会から弾き出された者たちの熾烈な処世術史でもある。熱量と人間味を存分に描きこむ井筒和幸監督の真骨頂がここにある。