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Monthly Column

ースーパーティーチャーが教えてくれるものー

『スーパーティーチャー 熱血格闘』 上映:12月28日(土)〜 1月10日(金)

2018年 中国他 1時間41分監督:カム・カーワイ出演:ドニー・イェン/ジョー・チェン/ユー・カン

タイトルそのままズバリな学園コメディ&アクション。

宇宙最強と称されるアクションスター、ドニー・イェン(現在56)が、キレッキレのアクションを魅せつけてくれる。人間鍛えればここまでこれることを証明してくれているが、いや、彼は超人・・・現実はそう上手くはいかない。と、遠い目で眺めてしまった。

 物語は落ちこぼれクラスの担任となったドニー先生が、授業にまったく興味のない生徒たちを独自の指導法で目覚めさせるというもの。よくある学園ものかと思っていたが、それだけではなかった。現代香港の社会問題も何気なく見せていた。

 

映画の中で中心に描かれているのは5人の問題児たち。ドニー先生はそれぞれに家庭訪問をして、彼らをまるごと面倒見ていく。パキスタン移民の子は香港で生まれて育ち、人種差別を目の当たりにして一歩前へ進めないでいる。アルコール中毒になってしまった父親を持つ双子の兄弟は集合住宅のものすごい狭い部屋で暮らしている。あの高校生の大きな体には不釣り合いな幅の狭い2段ベッドがリビング代わりになっていた。それと対照的なのが、F1レーサーを夢見る女子ウォンの家庭だ。広々とした部屋で家族4人が優雅に食事をとっている。何不自由ないように見えるが、父親が弟にばかり関心を寄せるため、彼女は居場所を失って反発している。

香港は2018年の国際住宅価格調査によると、不動産価格が世界で最も高いそうだ。その原因は東京の約半分の面積に人口が密集して、物理的に土地がなく供給不足。その結果、超高層建築がひしめき合っている。その数も香港が世界最高数なのだとか。劇中、俯瞰で香港の街が映し出されるが、天に突き抜けそうな高さだけでなくその細さが深刻さを物語っていた。ドニー先生の学園も開発候補地になっていた。賃貸物件の価格も高騰して、公営住宅の入居に5年も待たなければならないこともあるとか。ケンカが絶えず退学になったレイ君もその抽選結果を待っていた。狭くて高い家賃を払うために働かなくてはならない。しかし、双子の兄弟の父親はアル中で息子たちからの信頼も仕事も失っている。一方、レーサーを夢見るウォンの父親は羽振りがよさそうだ。子どもたちが求めてもいないようなお土産を用意して帰宅していた。

ドニー先生は、生徒たちそして社会が抱える様々な問題にも向き合っていく。そして生徒たちは、問題解決の過程で「なぜ学ぶことが必要なのか」に気づいていく。ただの熱血教師ではないスーパーティーチャー人生の意義を教えてくれる。(小林栄子)