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Monthly Column

ーColumnー

『北の果ての小さな村で』 上映:9月28日(土)〜 10月11日(金)

2017年 フランス 1時間34分監督:サミュエル・コラルデ出演:アンダース・ヴィーデゴー/アサー・ボアセン/チニツキラーク村の人々

昨年より1ヵ月遅い梅雨明けと同時に今年も猛暑がやってきた。高崎まつりでは、開始時間を遅らせたり、消防団の方々が消火栓から放水するなど、暑さ対策が行われていた。うん十年前、私の小学校時代は、扇風機もクーラーもなく夏を過ごした記憶があるのだが・・・。現在では高崎市内の小中学校のエアコン設置率100%だそうだ。異常ともいえるこの暑さは一体いつまで続くのだろうか。 そんな季節に観る本作は格別だった。 北の果ての世界最大の島グリーンランドは面積の約8割が氷に覆われ、1年の最も暑い7月の平均気温は10℃だそうだ。オープニング、どこまでも広がる銀世界、海に浮かぶ流氷の景色が目に飛び込んでくる。なんという清涼感だろう。 グリーンランドの東部、人口約80人の村チニツキラークへデンマーク人の青年アンダースが新任教師として赴任する。小学校の教室ではのびのびと育った子供たちが大声でおしゃべりしてまったく授業に集中しない。村人たちからもよそ者扱いされ、アンダースの心は折れてしまう。ある日、生徒の1人が1週間も学校に来ず、心配して家を訪ねると、学校に対する価値観が違うことを知る。アンダースは村人たちとの交流を通して、今まで自分のものさしで物事を見ていたことに気づく。教える側から教えられる側へ、村の豊かな文化や風習に触れるうち、彼の心に変化が生まれていく。アンダースが“よそ者”扱いされていたのは、デンマークがグリーンランドに対して行ってきた同化政策が背景にあることを映画はさらりと描いている。そして、ラスト。字幕により、“あること”が明かされ、スクリーンに映るすべてがダイレクトに胸に響く理由に納得がいった。 雪原を一直線に力強く走る犬ぞり、雄大なフィヨルド、神々しいまでの美しい映像に吸い込まれるように魅入った。そして、ふと気になって、グリーンランドの温暖化の現状をWEBで検索すると、地鳴りとともに氷の塊が裂けていく様子や、氷の表面が溶けた海を渡る犬ぞりの映像があった。近代化や温暖化が進んだら、チニツキラーク村の人々の生活にも変化が訪れてしまうのだろう。(小林栄子)