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Monthly Column

ー愛しき映画狂たちー

『サッドヒルを掘り返せ』 上映:5月4日(土)〜 5月17日(金)

2017年 スペイン 1時間26分監督:ギレルモ・デ・オリベイラ出演:エンニオ・モリコーネ/クリント・イーストウッド/ジェイムズ・ヘットフィールド

ここ高崎では、年間を通して映画等の撮影が行われている。その支援作品が増えるにつれ、全国各地からロケ地を訪ねる“聖地巡礼”者も徐々に増えてきている。かく言う私も、かつて『人のセックスを笑うな』(08年/井口奈己監督)のロケマップ作りと称して、撮影が行われた桐生が岡遊園地を訪れたことがある。観覧車に乗り、主人公と同じ景色を見て、同行者が引くほど映画の世界に浸ってしまったことは今となっては良き思い出だ。
あのロケ地へ行ってみたい。という気持ちは万国共通であることが本作から伺える。
これは、「クリント・イーストウッドが踏んだ石を踏みたい。」という映画ファンの切なる願いが世界へ広がり、結実した奇跡のドキュメンタリーである。
『続・夕陽のガンマン』(66年/セルジオ・レオーネ監督)で伝説的な決闘シーンの舞台となったスペイン北部の渓谷は、撮影後そのまま放置され土に埋もれていた。そこで、地元の有志たちが“聖地”サッドヒルを復元させようと立ち上がる。しかし、彼らだけでは埒が明かず、SNSでボランティアを募ると、世界中から映画のファンらが集結。聖地巡礼を超えた聖地再生の全貌をカメラが追う。
復元作業と並行して語られるのは、地元の有志たち、映画評論家、映画監督、ヘヴィメタル・バンド「メタリカ」のジェイムズ・ヘットフィールドら、それぞれの映画愛。そのひとつひとつの物語は彼らの人生そのものである。1本の映画が人生を変えてしまうとは、正にこのことかと頷いた。さらに当時のスタッフやサッドヒル“建設”に参加した元スペイン軍兵士らが英雄然として語る撮影裏話が、CG時代ではもう経験することがないであろう人力の映画づくりの凄みを伝えてくれる。それぞれの熱い想いに触れ、ラストに思わず胸が熱くなった。

(小林栄子)