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Monthly Column

ー恋はミステリーー

『寝ても覚めても』 上映:10月6日(土)〜 11月2日(金)

2018年 日本 1時間59分監督:濱口竜介出演:東出昌大/唐田えりか

世の中には自分に似た人が3人いる。
などと言われてはいるが、先日、大学時代の友人からラインが入った。
「もしかして、さっきまで山手線に乗ってなかった? 駅のホームで似たような後ろ姿を見かけたんだけど・・・。」
「いやいや、私、高崎に居りますよ。人違い、人違い!」
確かに、似たような雰囲気の人はいるかもしれない。振り返ってみると、私はよく「誰かに似ている」と言われることが多い。それほどありふれた顔なのだろうか…。実際に会ってみると、それほど似ていないことが多いものだ。
誰かに似た人ではなく、顔がそっくりな人と突然出会ってしまったら…?
これは、同じ顔をしていながら、まったくタイプの違う2人の男性の間で揺れ動く女性の8年間の物語である。
ヒロイン朝子は、写真展で出会った麦と目が合い、2人は一瞬にして運命的な恋に落ちる。
「んなわけあるかい!」
麦の親友・岡崎の言葉を借りて、思わず突っ込みたくなる出会いだ。
でも何故だか不思議だ。この映画のテンポに巻き込まれて、段々と、そんなこともあるかもしれないと思わされてくる。
それは、濱口監督の絶妙な演出によるものなのだろう。
「細密な日常描写と、突然訪れる荒唐無稽な展開を可能な限り同居させる」という監督のアイデアがところどころに詰まっている。

何のドラマも起こらなそうなくらい、淡々と日々を過ごすヒロイン朝子が突然とんでもない行動に出る展開によって、現実と妄想の境目がまるでないような感覚に陥れられるのだ。

 

朝子の前から突然消える麦。それを示唆するものすごいシーンが登場する。なすすべもなく、いきなり突き放されたような、カメラの移動だ。これは、2度起こる。朝子と麦の距離感を絶妙に表していた。

そして、麦が行方をくらました後、朝子は麦にそっくりな亮平と出会ってしまう。朝子にとって、これは恐怖だ。

この後、朝子がとる行動に度肝を抜かれる。
彼女の心を理解するのは難しい。それを正しいかそうでないかだけで判断するのも違う気がする。
それは、人が人を好きになるということを理屈で説明できないことと同じのようだ。(小林栄子)

(小林栄子)