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Monthly Column

ー名作よ、再びー

『大いなる幻影』 上映:5月12日(土)〜 5月18日(金)

1937年 フランス 1時間54分監督:ジャン・ルノワール出演:ジャン・ギャバン/ピエール・フレネー

『恋多き女』 上映:5月19日(土)〜5月25日(金)

1956年 フランス 1時間39分監督:ジャン・ルノワール出演:イングリッド・バーグマン/ジャン・マレー/メル・ファーラー

今回上映するルノワールの2作品は、高崎と同じく、市民映画祭からスタートした映画館「川崎市アートセンター」の配給作品である。開館10周年を記念しての配給なのだが、世界の映画は「配給会社」が日本での上映権利を買い、全国の映画館へ届ける流れが主流。映画館が配給業務を担うのは稀である。
その劇場は、小田急線の新百合ヶ丘駅に位置する。数多くの映画人を輩出している今村昌平監督の日本映画学校(現・日本映画大学)もある正に”映画の街”だ。とはいえ、映画館ができるまで紆余曲折があったと聞く。川崎市が文化と芸術の出会う街をコンセプトに映画館と小劇場を構想。地元で映画祭を続けている団体が運営を担うと思いきや、指定管理者には地元を知らない文化財団グループが選定された。市民がつくる映画館を目指す映画祭メンバーたちは、孤軍奮闘の末、運営の一部に参加することになった。映画館を勝ち取った時の代表・野々川氏は、私の映画学校時代の同期である。開館前には、高崎に何度も足を運んでくださり、「私たちが運営しなくて誰がやるの?」とものすごい熱量で映画館運営を熱心に取材されていった。開館して間もなく、野々川さんは帰らぬ人に。しかし、現在も映画館の運営は映画を愛する地元の人たちによって支えられている。
なぜ、この作品を配給することに決めたのかを伺ったところ、『大いなる幻影』のような名作が再び配給されていないのはもったいない、と常に思っていたとのこと。また、『大いなる幻影』の対になるようなもう1作品を、と考えた時に『恋多き女』になったそうである。
『大いなる幻影』の主人公マレシャル中尉は、収容所からの脱走を諦めずに繰り返し挑む。その姿が野々川氏に重なった。

 

(小林栄子)