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Monthly Column

ーさんかくからよんかくへー

『犬猿』 上映:4月28日(土)〜 5月11日(金)

2017年 日本 1時間43分監督:吉田恵輔出演:窪田正孝/新井浩文/江上敬子/筧美和子

吉田恵輔監督の『さんかく』(10年)には、驚かされた。あの衝撃作からもう8年が経つとはこれまた驚き。
同棲して2年のマンネリ三十路カップルのところへ、彼女の中学生の妹が割り込む三角関係を描いた作品だ。ほんわか系の恋愛映画と思いきや、見事に裏切られた。それぞれが相手を思いやる気持ちがちょっとずつ欠けていて、みんな自分本位。相手の気持ちに気づき始めたときに、とんでもない事態が起こる。私はこれをホラー映画と認識した。彼らの変化の過程を描くのが絶妙で、その心の中の隅っこまで見せられた気分になった。そこには、人間の醜さ、愚かしさ、愛おしさが充満していて、自分の中まで覗かれてしまったようで恐ろしかった。

 

今回は、姉妹の関係をさらに掘り下げて、そこへ兄弟が加わる。四角関係で攻めてきた。人間の心の中にある鋭い感情にまで触れていて、これまたゾクっとさせられた。
容姿にコンプレックスがあるが優秀な姉と、努力は苦手だが愛嬌と見た目で世の中渡っていけている妹。姉は取引先の営業マンに想いを寄せるが、妹が割り込んできて嫉妬心から感情を崩壊させる。一方、想いを寄せられた営業マンの元には刑期を終えた兄が転がり込む。正反対な性格の兄弟姉妹。近すぎるからこそ厄介だ。ここまで踏み込んで良し。という互いの距離感がわからなくなる。本人には悪気のないことでも、実は恨みを買っていたという、本人も気づかない領域まで手に取るように伝わる。そして、いがみ合う彼らは妙に人間臭さを匂わせる。型破りな兄に従うふりをして心の中では鬱陶しく思っている一面をのぞかせる弟を演じた窪田正孝の力量に唸る

(小林栄子)