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Monthly Column

ー映画という魔法ー

『花筐/HANAGATAMI』 上映:3月3日(土)〜 3月25日(日)

2017 日本 2時間49分監督:大林宣彦出演:窪塚俊介/満島真之介/常盤貴子

大林作品との出会いは中学生の頃だった。
松竹電気館へ友人らと『ふたり』を観に行った時のことは今でもはっきりと覚えている。そして、次の春、高崎映画祭で上映されることを知る。再びあの感動を味わいたいと、文化会館へ足を運んだ。そして、それが今につながるとは思いも寄らなかった。
『ふたり』は、交通事故で死んでしまった優秀な姉が何をやってもドジばかりな妹の前に現れ、妹を手助けしていく物語である。
凝り性の私は、劇中でヒロインの姉妹が度々口ずさむ主題歌のCDを求め、新星堂へ駆け込むが、需要がなかったのだろう、店頭に並んでおらず、取り寄せをしてもらいようやく手に入れた。ちなみに、このテーマ曲は大林監督が作詞、さらに、エンドロールでは監督のテノールの歌声が響き渡る。そして、赤川次郎の原作も読んだ。しかし、私の想像力では、あのテーマ曲は聞こえてこないし、姉は”姿”を現してくれなかった。ヒロインが姉の死を乗り越えて成長していく眩しさ、そして同世代の物語として共感したこと以上に、どこか不思議な世界へ迷い込んだような感覚に心を鷲掴みにされたのだった。大林監督は、姉をよみがえらせるという現実ではありえないことをさせ、歌も歌ってくれた。
それ以来、私は大林ワールドの住人だ。

さて、最新作『花筐』である。
海の中に存在しているような学校、そこに通うどう見ても中年な学生たち、巨大な月に切り貼りのような合成映像の数々。まくしたてるようなセリフ回し、紙芝居をめくっているかのような切り返される映像。奇抜で刺激的で幻想的でありえない世界を大林マジックで成立させてしまっている。いつまでも、その夢から覚めたくないと思った。

(小林栄子)