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Monthly Column

ー10月9日。ー

『残像』 上映:10月14日(土)〜 10月27日(金)

2016年 ポーランド 1時間39分監督:アンジェイ・ワイダ出演:ボグスワフ・リンダ/ゾフィア・ヴィフワチ

ここにアンジェイ・ワイダ監督作品への想いを寄せるのは2度目となる。
そしてこれが惜しくも最後になってしまった。

2016年10月9日。ワイダ監督は90歳で逝去された。
大国に翻弄され、苦難の歴史を辿った祖国ポーランド。そこに生きる人々を通して圧力に屈しない精神を描いてきた監督だ。
私がワイダ作品についてとやかく言うのはおこがましいと思っているが、監督の作品に触れてから映画の中の「抵抗」は、私が映画を観る要素の1つとなっている。つまり、現状に憤りを感じても、信念を曲げずに立ち向かっていく(または、向かおうとする)様がスクリーンに映し出される瞬間が好きなのだ。世界中に点在しているやり場のない”憤り”(エネルギーと言うべきか)は、映画の作り手によって放出、表現されることで世界のどこかの誰かに届けることができるのだ。映画にはそんな力があることをワイダ作品を通して知った。
『残像』の主人公・ストゥシェミンスキは、国家体制により表現の自由が制限されても、自分の理念を貫き通そうとする前衛画家である。この姿は、いくたびの検閲を受けても怯まずに祖国を撮り続けてきたワイダ監督自身にも通じる。
私は、監督からの最後のメッセージを、主人公の娘・ニカの姿を通して受けとめた。目の、いや、心の残像にいつまでも留めておきたい素晴らしいラストシーンだった。(小林栄子)